9月10日、日曜日、秋のバルに出かけてきた。
函館旧市街、西部地区の70店舗が参加する、ちょっとした一大イベントだ。
昨今では、大門バル、五稜郭バルなども開催されるようになったが、ここが「本家バル街」。
スペインレストラン「バスク」の深谷オーナーシェフの提唱で始まり、今回が28回目となる。
考えてみれば、けっこうな歴史というか実績だ。
最初は、こんなに長続きするとは思っていなかった。
いささか感慨深くもある。
とはいえ、今回のバル街には不満がなかったではない。
というより、はっきりと不満があった。
日曜日開催?行くわけないでしょ!
そう、今回はなんと日曜日開催。
翌日は仕事だ。
(本来なら、だけど)
家事や煮玉子の仕込み、趣味(仕事の延長?)のHP制作に勤しみ、その後、温泉でまったりと湯に浸かり、明日への鋭気を養うのが日曜日のルーチンだ。
なので、当初Sさんに誘われたときは、ソッコーで断った。
誘ってくれた当人にしても、行く気満々とは言えない状態で、「行きますかぁ~?」と、例の口調で最初から疑問形のお誘い。
いくわけないすよね、ってな感じだ。
それが、急転直下、なんで行くことになったのか…。
まあ、それはおいおい語るとして、まずは一軒目から紹介。
今回の参加メンバーはSさん(♂)、Kさん(♀)、Tさん(♂)、そしてワタシの、飲兵衛4名である。
2017秋バル一軒目「ピアット」
正直言って、「ピアット」にはまったく期待していなかった。
日曜バルだから早めに行こう、明るいうちから飲みまくろうという妙なテンションでスタートしたものの、開いている店がかなり限られていることが判明。
17時前からやっている店の中で、我々の進行ルート上にあって、良さげなスポットというと、ここくらいしかなかったのであるが…。
期待していなかった分を差し引いても「当たり」
普通、バル街のピンチョスと言ったら、ちんまりとしたつまみ三品程度が、皿の上に、たっぷりとしたマージンで並んでいて、やたら皿のスペースだけ取っているシロモノってのが常だが、「ピアット」のそれは、けっこうなボリュームの、食べ応えのある「一皿」だった。
皿自体食えるし。
ちょっとした昼食くらいの量がある。
腹ペコだった我々にとって、実に嬉しい「誤算」となった。
なお、写真のパスタだが、盛り付けられているのは紙の皿ではなく、ピザ風の生地。
なんと、ある程度パスタを食べたら、あとはカルツォーネというかクレープのようにくるっと巻いて、丸ごといただける。
実にナイスな心配り、かつ腹づもり。
ビバ・ピアットである。
グラタンが熱々だったら、申し分なかったろうが、大当たりの一軒目に、大満足の4人だった。
二軒目「はこだてビール」
本当は「MARUSEN」が目当てだったのだが、予想に違わず大行列。
なんでいつもこんなに混むのか訝しみつつ、行列を横目に通過、とりあえず次の一杯、一皿を求めて歩を進める。
はこだてビールだが、正直言って、ピンチョスには、あまりパッとした印象がない。
なんというか、食べた瞬間に記憶の迷宮に捨て置かれるような味というか。
ビジュアルといえば、なんだかスーパーの惣菜然としていたような記憶しかないし。
ただ、ビールは美味かった。
「はこだてビール」なので当然と言えば当然なのだが。
到着早々、目に飛び込んで来たのは、取扱いの大きな「コーヒービール」。
なんでも、売り出し中の新商品らしい。
おすすめですという言葉に、へーどれどれってな軽いノリで、全員こいつをオーダー。
それが、とんでもないシロモノであることなど知るよしもなく…。
大いに期待してコーヒービールを口にした我々だが、口に含んだ刹那、全員が沈黙という海の底に沈んでしまった。
不味い。
不味いとしか言いようがない。
ルートビアから甘さと香りを取り除いた残滓に、無糖の缶コーヒーをぶっ込んだような味がする。
それに苦い。
苦いとしか言いようがない。
コーヒーの苦さとビールの苦さがタッグを組んでラリアットを仕掛けてくる。
容赦ねー。
それにピンチョス。
ピンチョス?
君、ピンチョスだよね。
う~ん、二軒目は選択ミスだったか。
それでも、全員、なんとか不気味なクスリっぽい濃褐色の液体を飲み干したのがエライ。
もしかしたら、我々は、はこだてビール黒歴史の生誕に立ち会ったのかもしれない。
なんだかベツレヘムの四賢人だな。
そう思うことにしよう。
あ、一人多いか。
三軒目「ラコンチャ」
三軒目にえらんだのは「ラ・コンチャ」。
はこだてバル街を提唱した、言わずと知れた深谷シェフ経営のスペインレストラン「バスク」。
その姉妹店だ。
事実上、はこだてバル街発祥の店と言っていいだろう。
などと、偉そうに語っているが、実は、ラ・コンチャに一度も入ったことがない。
過去2回ほど予約を入れたことがあるが、いずれも満席ということで断られた、因縁の店でもある。(バスクには大昔に行ったことがある。)
まずは飲み物。
一人を除いてサングリアをオーダー。
スペインと言ったらサングリアでしょ、という呼びかけにも、揺らぐことなくビール。
彼女は常にビール、とにかくビール、いつでもビール。
安定のKさんなのである。
まあ、ともあれ乾杯。
うん、サングリアを選んで正解。
さっぱりと甘く、フルーツの酸味が口の中で爽やかに弾ける。
美味い。
ピンチョスは…う~ん、クリームコロッケはいいんだが、鮟鱇のジュレがちょっと生臭くてイマイチ。
量も少なめで、ちょっと期待外れかな。
バル街始まりの店ということで、期待値を上げすぎたのかも知れない。
サングリアの味と、店内の雰囲気は素敵なんだけどね。
三軒目は、まあ普通に楽しめたということで良しとしよう。
四軒目「パザール・バザール」
「ラ・コンチャ」の次に選んだのが十二軒坂のトルコカフェ「パザール・バザール」。
あれ、「バザール・パザール」だっけ?
バザールは市場、パザールはトルコ語で市場。
だから日本語にすると「市場市場」となる。
市場の市場である。
よく考えると、わけがわからない。
「パザール・バザール」はワタシが押した店。
おすすめはやはりケバブとトルコビール「エフェス」だろう。
「パザール・バザール」は、四年前のイスタンブール旅行の際、いろいろ情報を教えてくれた店でもある。
当然、イスタンブールというかトルコには詳しくて、ケバブの味は、正直行って本場のそこらの店よりずっと美味いと思う。
ビールがエフェスというのも嬉しい。
イスタンブールでビラ(ビールのこと)と言えばイコール「エフェス」。
軽やかでさっぱり目の味は日本人好みかも知れない。
ガラタ橋のレストランで、サバサンドを食べながら飲むのにぴったりの味だ。
ピンチョスの「ケバブサンド」は、見かけとは裏腹のボリューミーな一品で、袋から出すや否や、中に詰まった、たっぷりのドネルケバブが決壊。フォトジェニックとは真逆の様相を呈してしまったため、写真は撮らなかったが、味はまさにイスタンブール。タクシム広場近くのケバブ店のそれより間違いなく美味しかった。
五軒目「久留葉」
なんだか、かんだか飲んで食べているうちに、とうとう最後の店となってしまった。
けっこう飲んだし、腹もくちくなってきた。
飲兵衛4名全員、そこそこに出来上がりつつある。
ラストステージはさっぱりとしたものがいい、酒なら日本酒なんかがいい。
ということで大三元坂にある、蕎麦彩彩「久留葉」を目指す。
とはいえ、ラストと言いつつ、この時点でまだ18時45分。
そろそろ宵の口の気分でいたが、とんでもない。
宵の口の入口の前にすら立っていなかった。
夜は始まったばかりなのである。
それにしても、熱すぎず寒すぎず。
ほろ酔いで歩くにはちょうど良い。
軽いジャケットひとつで石畳を行けば、心地よい風が頬をそよぐ。
実にいい気分。
実にいい飲兵衛日和。
澄んだ夜空で、月のやつ、笑ってやがる。
人気店だけあって、「久留葉」もけっこうな賑わいである。
ちょっと狭い店内で、杯を傾け、甘口の日本酒をちびりちびりと、喉に流し込む。
あ、俺、今、ちょっと酔っ払ってる。
いい加減で、酒が回ってきた。
腹もちょうど良い感じだし、飲兵衛4人でまったりと、今日はいいバル日和だなあ。
五軒目を終えてゴール…とはならなかった
と、そこで終わっておけばいいのに、それじゃ飲み足りないのが飲兵衛というもの。
時刻はまだ19時半。
夜はこれからである。
といいうわけで、バルチケットを使い果たした飲兵衛どもは、次なる店を、酒を求めて大門に繰り出すのであった。