食品売り場で夕餉を探す
遅めの昼飲みが終わったのが16時ちょっと前…完璧に昼飲みじゃない。
2時間ほどで夕食タイムだが、食い物も飲み物もほぼほぼ満タンの状態では晩御飯どころじゃない。何処にか食べに行こう飲みに行こうという気にはちっともならない。
とはいえ、ほっとけば腹はへるだろう。いったんホテルに戻るとして、それからどうする?
夜の街にまた繰り出すのはぶっちゃけめんどくさい。雪もちらついているし、今日はもう歩きたくないんだよな…などと思いつつ、本能と北海道人のDNAの赴くまま、ふらふらと地下街を彷徨い、スーパーの食品売り場へと誘われるのであった。
逢魔が時、値下げシールを纏った魔物たちとの逢瀬
ススキノラフィラの地下というか、イトーヨーカドーすすきの店の食品売り場にはけっこうお世話になっていて、札幌第一ホテルに泊まるたび、晩御飯やら酒の肴やらを買い求めているような気がする。それも必ず夕方。狙いは弁当・惣菜の見切りタイム。魅惑のゴールデンアワーである。手ぐすね引いて待っているセイレーン、そして値下げシールを纏った魔物たちとの逢瀬に抗う術などインポッシブルなのだ。
抗うつもりは金輪際ないが。
かき飯とかいうサキュバス
時刻はまさに逢魔が時。のっけから強烈な魔物と出会ってしまった。20%引のかき飯だ。税込753円→税込602円。黄色い見切りシールを纏ったサキュバスの魅了が半端ない。やばいやばいよ。
ぷっくりとした大粒のカキが10個も鎮座。なんという大盤振る舞い。醤油とみりんで色づいた姿が色気ありすぎ。艶やかさに卒倒しそうだ。
のっけからガッツリ魅了された!すぐさまカゴに放り込んでしまいたい!ああ悩ましい!
などと言いつつ、伸ばした手を理性で押し戻す。ギリギリセーフ。まだまだ序盤戦だ。魅惑の魔物たちとの逢瀬はこれからが本番。見切りタイムのベテラン(一応)としては、そうそう簡単に陥落するわけにはいかない。ザクとはちがうのだよ…などと、次なる出会いを求めてヨーカドーの地下ダンジョンを彷徨い始める。
さば高菜巻とかいうセイレーン
といいつつ、かき飯に匹敵する魅了を放つ魔物に早々と出会ってしまう。やばいよやばいよ。
敵はさば高菜巻。なんいう素敵な響きだろう。セイレーンにしめ鯖好きがばれてしまったようだ。いかにも脂がのった見事な断面が食欲を強烈にそそる。そそるのだが…しかし見切りシールがない。うむ、ちょっと頭を冷やすことができた。
税別475円税込512円。十分にリーズナブルなのだが、これで見切りシールを纏ったらどうなるか…抗う術がないというか、そもそも抗う理由がない。その時を待つべきだな。というわけで戦略撤退を果たす。さて次は…。
ご当地即席麵とご当地カレーという閑話休題
それにしてもスーパーの食品売場というのは、どうしてこうも魅力的なのか。
おりしもこの日、ヨーカドーすすきの店ではご当地即席麵とご当地カレーのフェアをやっていた。決して豊富なラインナップではなかったが、なかなか珍しいアイテムもあって興味をそそられる。
全国どこに行っても、それどころか世界(といってもヨーロッパと中国と台湾しか知らんが)どこに行っても、大型スーパーは似たような構造(棚割)をしていて、一見なんだか没個性の塊のようなのだが、実際のところけっこうな違いがある。
まず扱っている商品が違う。国内であっても距離があればあるほど地域差が大きい。味噌・醤油なんか特にそれを感じる。まして国内外の違いといったら。
旅先の楽しみのひとつは地元の市場巡り=ジモティの台所探訪だが、今はどこの国もデイリーな食材調達はスーパーマーケットが主流(たぶん)だ。なかでも惣菜(デリカ)は、国内外を問わず、年を追うごとに充実度アップをしている印象がある。
同じ北海道、同じヨーカドーでも、扱っている商品には意外なほど違いがあるのだ。
閑話休題。
そして迷いに迷って選んだ晩ご飯は…
結論から言うと、予想もしていなかった構成となった。
イトーヨーカドーすすきの店の地下ダンジョンを1時間ほど彷徨い…彷徨い疲れた。当たり前だな。
魅力的なオーラをビシバシ発する、数多の魑魅魍魎なサキュバスやらセイレーンやらの魅了を撥ね除けたのは二つのアイテムと疲労困憊。残念だが見切りシールの攻撃は無効だった。攻略されたかったのに…。
絶品アジフライ+食パン+ポテトサラダという選択
アジフライとポテトサラダと食パン?なんじゃそりゃ?
自分で選んでおきながら浮かんだのがその言葉。1時間近く彷徨ってこのチョイス。まあなんじゃそりゃだよな。
まず惹かれたのは「☆絶品!アジフライ」というタイトル。タイトル詐欺っぽい気がしないでもない。実際、惣菜売場のアジフライに何度騙されたか分からない。
それでもつい期待してしまうのだ。今度こそ今度こそ、そして今度こそ美味しいアジフライに巡り逢うのだ! というわけで、所詮自称だがここはひとつ乗ってみた。
身はけっこうデカイ。パック越しの姿も充分に美しく、サクサクホクホクオーラが漂っている(ような気がする)。そして値段は、なんと税込90円。値引きシールがなくても充分リーズナブルではないか…で、つい手が出てしまったという次第。
次に惹かれたのが「フランス食パン」。なんじゃそりゃ?
初めて聞く名だ。置かれているのはフランス食パンのほか普通の角食、ドイツ、イギリスの名を冠した食パンオンリーで構成されたコーナー。今まで目にかかったことのない棚割だ。しかも一斤だけではなくボッチに嬉しい少量(2枚)パックも充実。なんという神対応。目からウロコが精神的に剥がれ落ちる。ヨーカードへの畏敬が生まれたような気がする。
ポテトサラダはサンドイッチの単なるフィリング要員である。一夜限りの夕餉のためにマヨネーズを買うのもバカらしく、ならばと考え買ったのがマヨ代わりのポテサラ。しかもセブンイレブンに置いてるアレ。あんまり期待もしていなかったのだが、結果から言うとこれが実に良い仕事をしてくれた。
かき飯にさば高菜巻き、その他数多の誘惑・攻撃を撥ね除け選んだ、あまりと言えばあまりに意外な最終チョイスだったが、それが望外に美味くてちょっと感動…という話は次回で。