いつものように夕食を済ませ、居間のカーテンを閉じようと窓に向かうと、ほどよく茜に染まった西の空が。
すでに日は沈んでいたが、この季節、明るさはまだ少し続く。
網戸越しの風は涼しさからほど遠いが、日中の熱波に比べたら存分にマシで、何より、熱気のこもるこの部屋──2階の居間に比べたら、まるで天国のような清涼さ…に感じるのは決して気のせいじゃない。
これは散歩するしかないというか、むしろ散歩すべきということか…あ、受信しました、散歩しろってことですね了解です。
というわけで、LUMIX DMC-GX8をぶら下げて、近所の丘までちょいと散歩することにした。
「元宝」前で猫に遭遇する
自宅を出て数分。
ご近所中華の「元宝」前でくつろいでいた猫を発見。
白ブチの基本シャノワール(黒猫)。
仔猫と成猫の中間くらいだろうか、顔つきにあどけなさが残っていてメンコイ。
さっそくカメラを向ける。
お?嫌がらない?
ぱっと見もそうだったが、この「子」、仔細に眺めても顔に険がない。
けっこう可愛がられてるんだろう。
とても人なつっこい。
でも、う~ん、この表情には既視感ありまくりなんだよな。
あ、そうか、この子、人なつっこいというかアレだ、「なんかおくれ」、「食べ物ちょうだい」だ、世渡り上手というか猫の処世術だ。
昔飼っていた猫に似てるんだ。
思わず手を差し伸べたくなる表情、仕草なんか特に。
(ゴメンよ、君の腹を満たすギフトはないんだ。)
そう感じさせるオーラを纏ってるんだよね。
なんてことを思っていたら、店から人が出てきて、あっと言うまに踵を返し、そっちへすり寄っていった。
現金なヤツだが、それがまた彼女(猫)に似ている。
とっとこ去って行った後ろ姿に懐かしさを憶えながら散歩を続ける。
「赤川中学校前」のバス亭から80mほど歩いて交差点を右に折れ、未来大へ向かう坂道を上り始める。
季節感皆無の秋桜を横目に、なおも進み、くるみ学園に近づく頃には、あたりはいよいよ夕闇に沈み、本格的に夜の帳が降り始めていた。
涼風はまだやって来ない。
熱気はすっかり失われたが、身体に纏わり付くようなジットリした空気は、紛うことのない夏だ。
さらに坂を上ると、西の山並みと函館湾が見える丘に辿り着く。
ここまで家を出て20分ほど。
寄り道をしなければ10分もかからない。
いつもの散歩道、いつものランニングコース、いつもの丘、いつもの風景。
ひとことで言えば「日常」ってやつだ。
まあ、近所に丘のある日常って、あんまり日常的じゃないような気もするが…。
ここは、ちょっとだけ特別な風景をくれる神様に感謝するとしよう。