秋田・青森 秋の小旅行その6 「そして十三夜」

ようやく十三夜へ─メタ的な意味でも

寒風山の頂上から隣の山を見る
さようなら寒風山 ほんとうに寒風な山だった

寒風山を後に、どんよりとした空の下、車は北上する。
目指すはマックスバリュー能代北店。
を経由して、本日の最終目的地、民宿「十三夜」である。
今夏に引き続き、これが二度目の宿泊だ。

時刻は13時ちょっと。
4時到着の目標には余裕がある。
計画どおりだな。
なので途中、日本一低い山である「大潟富士」に立ち寄ることに。
計画どおりだわ。

それは標高0mの富士山

大潟富士は、標高海抜0mになるように作られた山である。
大事なことだから二度言うけど、作られた山である。
写真を見てみよう。
単なる盛り土だ。
そして標高0m。
地面との差は4m弱だから、下の車は海面下およそ4m。
本来は水没していることになる。
つまり水没車だ。
当然、写真を撮っている我々も水没している。
つまり水没者…縁起でもない。
よく考えれば、とんでもない施設というか構造物だな。

「お前達はすでに水の底だ!」
「ブクブク」

北斗の拳じゃあるまいし。

にしても、こんな盛り土に富士なんて名前、良くつけたモノだ。
ほめてないぞ。
昭和公園(函館昭和町)の山の方が数倍デカイが、誰も富士なんて言わないし。
富士山の耳に入ったら不敬罪で捕まるレベルだわ。
などと文句垂れながら、函館から見物にやって来るわ、写真は撮るわだけど、
ホント、他に誰もいないんだよね、これを見に来る人って。

日本一低い山「大潟富士」
大潟富士 予想どおりの大きさ─もとい─小ささ
八郎潟を干拓して出来た真っ直ぐな計画農道
どこまで真っ直ぐな道 国策干拓地の証

真っ直ぐ道が空まで続いているようだ…晴れていれば

晴れていれば、さぞかし爽快な眺めだろう。
いかにも、計画され整備された人工的な(実際そうだが)直線道路だが、ワイルドな北海道のそれとはまた違う趣があっていい。
なんというか、全体に穏やかで柔らかな印象だ。
反面、開放感のようなものはあまり感じない。
イージーライダーは似合わないだろうな。
チョッパーを駆るピーター・フォンダを想像してみたが、鉢巻きして軽トラに乗ってる高倉健しか思い浮かばん。
農道でもあるんだよね、この道。

整備された花壇と荒れ地
整備された花壇と荒れ地のギャップが印象的

さあ、そろそろ十三夜の時間だ

どんよりとした空の下、ほぼ予定どおりにMAXバリュー能代北店到着。
酒と、少々のつまみを購入して、本日の宿に向かう。
ついでにお土産も買ったのはナイショだ。
地元ならではのお菓子がリーズナブルにゲットできてシメシメだとか、決して人に言ってはいけない。

ここまでは、ほぼ予定どおりだ。
スケジュール進行もそうだが、天気もまた。
予定どおりというか、期待どおりというか。
台風が近づいているのだが、微妙なさじ加減で進路が逸れ続けているようだ。
有難いことだが、このラッキー、いつまで続くのか。
今までラッキーだった分、最終日でまとめて支払わなければならないような気もする。
もちろん、対価に得るのはアンラッキーだ。
明日どうなるか、明日になれば分かること。

さあ、十三夜到着だ。

十三夜の外観
十三夜に到着のイメージ

十三夜アゲイン

久しぶり…というか2ヶ月ぶりの民宿十三夜。
玄関前で女将さんの出迎えを受ける。
やあ、またお世話になります。
ちっとも久しぶりの気がしないのは当然として、なんというか、やって来たというより、帰ってきたという感じ。
このユル懐かしさが魅力なんだよね。
といいつつ荷を降ろす。

民宿十三夜の和室
今回泊まった部屋 堂々たる和室である

今宵の部屋は和室。
なかなか趣のある佇まいである。
子供連れでも充分な広さ。
天井が高いので、一人だとボッチ感が半端ない。
昔ながらの建築なので、断熱性能は期待できないようだ。
有り体に言うと「寒い」。
この部屋の暖房器具が、小型の開放式ファンヒーター一基。
全室暖房が当たり前の、冬虚弱体質な北海道人にとっては文字通り背筋が寒くなる光景だ。
せめて炬燵があったら…あ、その手があったか。
気付かなかった、炬燵いいじゃないか。
今度提案してみようか。
※本記事は記載されている公開日時の1か月以上あとに書かれたものです。

ともあれ、部屋に着いたらまず充電。
あと、カメラにGPSデータ送信だ。
時間があればブログアップだが…今回はやめにしておこう。
今宵は食べ、飲み、そして語るのだ。

そして宴が始まる

民宿十三夜 2017年10月22日の夕食
今宵の夕餉 これ見よがしの華やかさとは無縁 暖かくそして美味い

前回もそうだったが、この値段でこの料理。
あり得ないでしょ普通。
派手さはないんだけど、それがまた良い。
年のせいかもしれないが、こんな「普通」の一品一品に、無性に恋い焦がれる。
旅館や料亭で供される職人技も悪くないが、どちらを食べたいかと言えば、こんな「普通」な味を選ぶ。
それはもう間違いなく。
橋で料理を啄み、盃を傾け、女将さんとの会話に興じる。
それが十三夜の楽しみ、十三夜の「普通」である。
まあ、こんな「普通」、そんじょそこらに転がってなんかない。
今どき希有な「普通」って、ちっとも普通じゃないし。
普通という名の特別。
そんな感じだろうか。

筍、ワラビ、がんもどき、蒟蒻、しいたけの煮染め
「ばあちゃん」の煮染めに感涙 筍とワラビが秋田

いつも思うのだけど、煮染めってどうしてこんなにほっこりするんだろう。
上手な人が作ればもちろん。
それなりの腕の人が作っても充分に美味しく、なによりも暖かい。
年を取った証拠でしょう♪
竹内まりやの唄にあったなそんなフレーズ。
華やかな皿達の中にあって、いつも地味地味な引き立て役を演じているけど、真っ先に目に入って、真っ先に箸を伸ばすのが煮染めなんだよね。
と言いつつ、箸を伸ばす。
まずは筍だな。
ほどよくつゆが染みた筍の、風味と歯ごたえを楽しんだら、柔らかなワラビで緩急をつける。
どちらも持ち味は野趣。
イメージ的には秋田だな。
たっぷりと旨味を吸い込んだがんもどきを味わったら、次は蒟蒻で口の中を引き締める。
いや、これもまた味が染みて美味い。
そして、殿は椎茸。
旨味をたっぷり吸ってプックリと膨らんだ身を噛みしめ、その弾力を味わい、口中にほとばしる出汁の旨みを味わう。
やばいな、書いてて腹が減って来た。
煮染め食べたいぞ。

豚の角煮 長ネギ添え
豚の角煮という変化球が面白い 口の中でとろける脂の軽やかな旨さ

二の皿が豚の角煮というのは予想外だった。
いや、良い意味で。
へー、ここでこってりとした一皿を持ってくるのかと。
てっきり魚系だろうと思っていた。
箸をつけると、思いのほか柔らかい感触にホーと思う。
こいつはあれだ、トロトロお肉だ。
ちょっと強めに挟むと千切れてしまいそうな、プルプルとしたソレを口の中に放り込む。
ちょっと噛むと、ホロリとほぐれ、続いて、トロっとした脂の旨みが広がる。
お、想像以上にあっさりしている。
脂っぽさは鳴りを潜め、肌つやに良さそうな成分が口の中で踊り出す。
これはたまらない酒のつまみですね。
などと、ビールをあおる。
最高ですがな。

カレイ?の煮付け 付け合わせのゴボウもいい味出してる
カレイ?の煮付け 付け合わせのゴボウがまた良い

そして魚の煮付けである。
たぶん…カレイ?
すみません、あまり魚に詳しくないんです。
聞いておくんだったと、今更の反省。

美味しい。
普通に特別美味しい。
塩っぱすぎず、薄すぎず。
良い感じで汁が染みている。
もちろん、生臭さなど一切ない。
身をさっくりほぐし、箸で口の中に入れると、ほのかな醤油の香りを放ちながら、旨みの染みた身がホロホロと崩れていく。
これ、ご飯のおかずに最高。
でもって、酒の肴にも最高。
日本酒なら申し分なしだけど、ビールで流し込むってのも悪くない。
何気なく並んでるけど、魚の煮付けって、近頃じゃ稀少アイテムなんだよね。
しつこいようだけど、この料金でこの食事、本当に良いんですか?

十三夜のボークチョップ
前回は撮りそびれた肉の一皿 今宵はボークチョップ…みたいな もちろん美味

とどめのポークチョップ。
パーフェクトなまでにザ・ベストご飯のおかず。
それがなぜとどめかというと、一番最後に登場したメニューだから。
前回はステーキ?ポークソテー?が、食事のやや終盤、酒が回り始めた頃に登場。
撮り忘れるわ、ご飯と合わせそびれるわのジョーカー的存在だったが、今回は割と早めに登場。
ご飯のおかずとしても、しっかりとその役割を果たしていた。
GJご苦労様。

前回同様、質・量とも満足な内容に、ただただありがとうと言いたい。
ビールで喉と口の回転軸を潤し、愛情こもった料理で舌と心を潤す。
そして、女将さんとの会話で魂を解きほぐす。
自分で書いてて恥ずかしいフレーズに思わず赤面だが、そのくらい持ち上げてもOKだろう十三夜。

ニシンの切り込み
ニシンの切り込みもあったのだ

女将さんと少しだけ語ったこと

腹もくちくなり、酒も進み、口も回るようになってきた。
相変わらず女将さんと話をするのが楽しい。
時折口にするグチもまた楽しい。
と言ったら失礼だろうか。
以下、要約。
※注:かなり脚色してます。

・せっかくの料理をお客さんが残すんですよねー(ショボーン)。

・うちは民宿、24時間のホテルじゃないんです、門限あるんです。
なのに、どうして?

・北海道の人って暖房ガンガン使って、真冬に半袖でビールにアイスクリームとかおかしくないですか?おかしいでしょ?

などなど。
ほんと、一人で良く切り盛りしていると思う。
いろいろ苦労されているようだけど、それもまた楽しみに変えていくパワーがあるんだろうね。

北海道人のくだりは頭が上がりません。
いや、まったくそのとおりですから。
北海道人って、ホント、エコに反することが好きというか得意なんです。
徒歩2分以上なら平気で車使うし。
自分も充分北海道人であるという自覚があります。
冬は北海道人から暖房代徴収してください。
そうしたら遠慮なく暖房ガンガン使いますから。

と、なんだか酒が進みすぎたのか、いささか眠くなってきた。
もう少し飲みたかったが、ちょっと横になりたくて、謎の会話を続ける相方と女将さんを残し、一人部屋に退散。
「ちょっと横に」が「朝まで横に」なったことは言うまでもない。

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